お酒

世の中に下戸の建てたる蔵もなし

酒を飲まないからと言って金が貯まるわけではない

井原西鶴の「世間胸算用」の中に出てきた言葉に「世の中に下戸の建てたる蔵もなし」というものがあります。
これは、酒飲みの人はお酒を買うために飲まない人に比べてたくさんのお金を使うというふうに考えると、全くお酒の飲めない下戸(げこ)ならその分たくさんのお金を貯めることができるのではないかということを皮肉っぽく言ったものです。

不思議なものでお酒が飲めない人が飲める人に比べてお金持ちであるというデータは全くなく、同じような年収の人同士でお酒が飲めるかどうかが貯金額に影響を与えることはほぼまったくありません。
要するにお酒を飲む飲まないということは収入に対しての支出には全く関係がなく、お金を貯めることができるかどうかは本人の資質や努力次第ということです。

結局はやりくりがうまいかどうか

お酒を飲むかどうかというのは一つのわかりやすい例であって、それが他の趣味でも同じようなことが言えます。
例えば何か打ち込む趣味があるという場合や、本やCDなど収集するのが好きというような人の場合です。
度を越した趣味を持っていて年収のほとんど全てをそれらに注ぎ込む人は例外的としても、何か好きな趣味やモノを持っている人だからといって貯金額がそうでない人に比べて極端に少ないということは実際にはそれほどありません。

やりくりが上手な人になってくると、好きな本やCDなどを購入するために食費を浮かせたり高価なアクセサリーやファッションなどを衝動的に買わないようにするといった金銭感覚の優れたバランスを持つようになってきます。
裏返して考えれば、何かに使う額がある程度わかっている人というのは無意識的にどこかで節約をするという自衛手段を身につけることができるということでもあります。

節約をするというのは確かに大切ですが、例えばお酒が好きだという人が一番好きなお酒をやめてしまったり、趣味などを全く持たないようにするというのはそもそも間違いであると言えます。
お酒の場合は健康面への影響があるので際限なくつぎ込むというのはおすすめできませんが、人生において大切にしたいことがあるのであればそれを無理にやめてまでお金を貯めても仕方がないというふうに考えられます。

それまでやっていたお酒や趣味を仮にやめてしまうと、それにつぎ込んでいた時間がすっぽりと抜け落ちてしまうことになるので、結局のところまた別の何かにお金を使うことになってしまい、貯金できる額は変わらないなんてことにもなりかねません。